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私家版・蕎麦屋の法則 その弐

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え~~~ またまた蕎麦の話です
 
前回も書きましたが、蕎麦ってぇのは、どういうわけか、常に「蘊蓄=うんちく=」との二人三脚が好きな食べ物であります。これが何故か? ちょいちょい。語り出すってぇとキリがないのが蕎麦であります。伊達に近くにある、ってだけのモンじゃないですね
面白いもので、定年間近とか窓際に行かされたおっさんたちは、何故か蕎麦打ちに手をだしたがりますな。不思議と、仕事が恐ろしく順調でイケイケな人ってぇのは、まず「蕎麦打ち」なんぞは始めません。IT系企業のCEOが「精神統一とリラックスのためにボクは蕎麦打ちをやってるです」……なんて話は、まず、聞いたことがありません

「蕎麦打ち」ってのは、とかく不思議なモノで、先行きがなぁ~んとなく怪しくなっている方ほど、なんだかのめり込みたくなるもののようで、人生の「上がり」が近づけば近づくほど、ついつい手を染めちまうようなもんでもあります

そんでもって、このお方たちは、「蕎麦は長~~い」というトコロから、繁栄長寿でもインスパイアされるんでしょうか? 何だかよくわかりませんが、大体の方は、自分でこさえてるだけでは物足りなくなって、だんだん、他人にごちそうしだしたりするもんです

下手の横好きが、どうだ、オレの蕎麦を食ってみろ!……なんてウチはまだよくて、終いには、オレの蕎麦が食えねぇのかーー!なんてね。なんだかもう、落語の「茶の湯」じゃあるまいし、って話ですねぇ、もう
まあ、そんなわけで、蕎麦ってのは不思議なモンで、これが高じてくるってぇと、退職後だの、脱サラしてだのと、「いつかは自分の店を出すんだぞ~~」なんて、勝手に意気込んできます。これがまた、判で押したように!言い出すってんですから、一種の病気なのかもしれません。とはいえまあ、ここいらがまた、蕎麦ならではの醍醐味なんでしょうなぁ……

ところがこれは不思議なモノで、カレーじゃあ、こうはいきません
 
カレー好きが高じてスパイスを植えまくって、スパイス畑を作っちゃった……、なんてのは聞いたことない。ましてや、インドに修行しに行っちゃった! なんて話も、まず聞きませんな。好きが高じて店までもっちゃう……これは蕎麦ならではの魅力というか、魔力というか……まあ、実に不思議なものです
蕎麦は「三たて」が美味い、といいますね。「挽きたて、打ちたて、茹でたて」の三つで、「挽きたて」の蕎麦粉を使って、打ったばかり(「打ちたて」)の蕎麦を、茹でたてで食べるのが美味しい、ってことです
 
しかしながら、実際問題として、店にお客さんが来てから、おもむろに粉挽いて、えっちらおっちら打って出してくる……って店はさすがに見たことがないですな。もちろん、「ない」とはまでいいませんが、そうそうないです。仮にやったとしても、そうそう続かないんじゃないかなぁ……
「蕎麦は、三たて、ってくらいだぁ。これから粉を挽きますって? 上等じゃあねーか、じゃあ、こっちとら、一本付けてもらって、じっくりと待たせてもらうぜー」

とか何とか威勢のいいコトなんぞも言えなくはありませんが、そんなこと言った日にゃあ、思わぬほど時間がかかりすぎて、肝心の蕎麦までたどり着く前に、こっちがいいくらい酔っ払っちまいますがな

まあ、風流に、酒をちびちびやりながら、蕎麦の仕上がりを待つ、ってえのも悪くはないんですが、まあ、なんだ、今日日は無粋でしょうがねーけど、そこまで毎回毎回、時間的余裕はない。そういう時代でもある、ってことですわな

何よりおっかないのは、それ(粉から打ち始める蕎麦が出てくるまで酒を飲んで待つ)が出来たとしても、肝心の蕎麦が、その風流さに堪えない……って可能性が結構デカいのではないか、ってことですよ。そういうカタチに妙な関心を示す店ってのは、肝心の蕎麦がいけねぇことが多いからねぇ……
ってなわけで、「挽きたて」「打ちたて」と「茹でたて」に多少の時差が生じるのは仕方ないでしょうなぁ……

しかしながら、これが、駅蕎麦なんかになると、蕎麦自体は既に茹でられてるものですな。どの程度まで茹でられて置かれてるのかはしりませんが、駅蕎麦なんかでは、注文を受けると、一人前に丸められた蕎麦を「てぼ」(湯切り)にポンっと入れ、ぐらぐらした大釜でささっと湯通しして、ちゃっちゃっと湯切りされて出てきます。それでも、ちゃ~~んと蕎麦の香りもすれば、歯ごたえや喉ごしが十分あるものもあります
 
ま、蕎麦なんざぁ、そんなに大層がって食べるもんじゃないんですよ。ま、別段、大層がってもいいんですよ、もちろん。その、切った「見得」に見合ったモノが出せるんだったら。そういう話です

私家版・蕎麦屋の法則
その弐 美味しい蕎麦屋は気取ってなく、逆は真ならずじゃ

(この項、適当に続く……書いてあるのは、あくまでも「個人的感想」ですよ~~)

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