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映画「駆込み女と駆出し男」
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江戸時代末期の鎌倉に実際にあった……寺そのものは今でもありますが……「駆け込み寺」(縁切寺)を舞台に、離縁を求める女たちと、戯作者に憧れる医者見習いの男、「駆け込み寺」の窓口となっている御用宿にかかわる人々、質素倹約令が出され世の中の閉塞感が強まっている時代……そんな話がタテにヨコにと糸をからめながら進んでいく映画で公開は2105年になります
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原作(原案)は、井上ひさしが晩年に11年をかけて執筆した「東慶寺花だより」という時代小説だそうですしかしながら、井上ひさしは、自分でも「遅筆堂」などと称してましたほどの遅筆=書くのが遅い作家=だったので、この「11年」をどの程度のモノに考えればいいかは、ちょっと微妙ですけどね。井上ひさしには、遅れた揚げ句に、完成しなかった作品や、お蔵入りになった作品も多いとも聞きます。そんな意味では本作の原作(原案)は、「11年もかかったけどちゃんと完成した作品」とも言えるでしょう
本編の中では、江戸時代後期の代表的戯作者・曲亭馬琴(滝沢馬琴)と、その代表作「南総里見八犬伝」がキーワードとして登場しますが、どうやら、馬琴も「八犬伝」の完結には相当の時間を要したようで、そこには、昭和の代表的戯作者・井上ひさしを彷彿させる部分もコレありで、これは本編の脚本も担当した原田眞人監督による双方へのリスペクトなのだろうな、と思いましたね
さて、江戸時代には幕府公認(寺社奉行が承認している)の縁切寺が2カ所、今回の舞台・東慶寺の他に、満徳寺(現・群馬県太田市内)というのがあったようですね。当時の婚姻制度についてはよく知りませんが、映画の中にもあるように、男から女への「離縁」は簡単に出来ても、女から男への「離縁」はいろいろ難しかったようですね
まあ、江戸時代……中世~近世ですから、現在より地位が低かったのは当たり前でしょう。しかしながら、当時であったにしても、女性ばかり虐げていては、社会が成り立たなくなってしまうので、低権利保有者には、低権利保有者なりの、「超法規的救済」の存在があり、この「駆け込み寺」などが、その代表例だったんでしょうね
しかしながら、戦国時代であった1562年に日本にやってきて35年間住んだというポルトガルから来た宣教師、ルイス・フロイスの手記には、「ヨーロッパでは堕落した本性に基づいて男が女を離縁するが、日本ではしばし、女が男を離縁する」などという記載もあるようですから、現代の基準やモノサシを、もっと昔に、単純に当てはめるだけでは、大きな間違いとなりそうなのは確かなようです。なにせ「原始、女性は太陽であった」わけですから……
さて、「駆け込み寺」とは言いますが、映画を見た限りでは、ラグビーのように、ボールを持ってゴールラインを超えて……いや、違うな。ラグビーはボールを地面につけなければゴール認定されないから、むしろ、アメリカンフットボールか。アメフトのようにボールを持った選手がゴールラインを超えれば得点……となるように、女性が寺に「駆け込めば即OK」というわけではなかったようですね
まずは、寺の門前まで行って、保護してもらうべく頼むようですね。本編では「草鞋でも下駄でも、身につけているものを寺の中に投げ込めばいい」というような話をしてたように記憶します。その後、門前にあるんでしょう、主人公・信次郎(大泉洋)が居候している取次場所=「御用宿」に保護され、そこで身元やこれまでの経緯などの「聞き取り調査」が行われ、そこでさまざまなケースについての説明を受け、了承したとなれば、3年奉公(←足掛3年=満24カ月)し、お勤めが終われば、晴れて離縁……だったようです
映画は、日本的なウェットな質感のある映像の中、いかにも「井上ひさし戯曲」的な台詞回し、スピード感ですすみますが、井上ワールドは、あくまでも「原案」だけで、脚本は原田眞人監督が担当したようです。主演の大泉洋は、今回の役のような、気取りが似合わない、ちょっとどこかが外れている「二枚目半」がふさわしいようで、非常に適役だったのではないかな?と思いましたね。また、戸田恵梨香、満島ひかりといった若手?と、堤進一、樹木希林、キムラ緑子といった芸達者がうまく組み合っており、上質なドラマになってた、と思います
今回はたまたまGYAO!で公開中なので見ましたが、これは映画館で見ても満足の1本だったな、と思いますね
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