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映画「パラサイト 半地下の家族」


パラサイト 半地下の家族 ☆☆☆☆/☆☆☆☆☆

今年のアメリカの第92回アカデミー賞で、作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞を受賞した話題の韓国映画ですね。第72回カンヌ映画祭でも最高賞であるパルムドームを受賞しています。「賞レース、総なめ」って感じですね~。詳しいストーリーなんかについては、まあ、話題作でもありますから、直接見た方がいいと思うので省略します(笑)

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Spoiler Alert!
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保本:なんです?!この果物の腐ったようなにおいは?

津川:貧乏のにおいですよ、この連中のね……

さて
この映画「パラサイト」を見て、真っ先に思いだしたのが、黒澤明監督の映画「赤ひげ」の中の、こんなシーンでした
「赤ひげ」は、山本周五郎の時代小説「赤ひげ診療譚」を原作に映画化されたもので、日本映画の傑作の一つでもあります。公開は1965年で、同年のヴェネツィア国際映画祭では、主演の三船敏郎が男優賞を獲得するなどしています

時は江戸時代後期の文政年間(1818~1831)。舞台は、江戸幕府が「享保の改革」の一環として江戸・小石川に開設した貧民層相手の診療施設「小石川養生所」です。物語の時点では、養生所が開設されて100年近くが過ぎたこととなっています

「赤ひげ」とは、この養生所の「所長」である医者・新出去定(にいで・きょじょう=三船敏郎)のあだ名です
町医者である赤ひげは、医術者としては高い技術を持ち、同時に、常に、社会における貧富の差や不公平、不公正、権力からの理不尽に怒っています。彼は日々、貧困と無知、そしてそこからくるモノ……病気もその一つです……と闘っています。世の中に対しては偽悪趣味ですが、力の在る者をくじき、弱気者たちを助けています

物語は、そんな赤ひげの養生所に、長崎帰りの若い蘭学医・保本登(←加山雄三が演じています)が現れるところから始まります。長崎に留学した保本は、江戸に戻れば将軍付きの蘭学医になると思っていましたが、戻ってみたら、貧乏人だらけの養生所で働くことになっていたのを知り驚き、大いに憤慨します

当たり前でしょうね。自分は長崎で3年、オランダ医学を勉強したので、江戸に戻れば、エリートコースに乗って、当然、行く末は将軍担当の医者へ出世街道まっしぐら……とでも思っていたら、いきなり、エリート街道とは全く無縁のゴミためのような場所・最下層の診療所へと行かされたわけですから
上の台詞は、そんな保本が、養生所で口にした最初の「養生所での感想」です

そして「におい」は、時として「壁」になります。強烈なにおいは、まさに壁です
 
上記のシーンでも、津川の後に付いて養生所内の案内を受けていた保本は、一瞬、何か、見えない壁にでもぶつかったかのような反応をみせ、体を後に引きながら顔をしかめ、上記の台詞を吐きます。それは、長崎帰りのエリートが、彼にとっては未知である……あるいは、それまで言葉は知ってはいても、実際には決して目を向けることのなかった「リアルな貧困」が作り出した「壁」とぶつかった瞬間でもあります
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本作品でも、「におい」は、わりかし最初の方から、貧困、あるいは格差社会を象徴する現象・キーワードになっています。ネタバレにはなりますが、「におい」への認識が元で、社長は刺殺されます

しかしながら、ちょっと驚きだったのは、その「におい」を作品中では「地下鉄の中のようなにおい」とも表現していたことですね~

「地下鉄、しばらく乗ってないなぁ……」と

当然です。金持ちだから、移動は運転手付きのベンツなんです……。まあ、アタクシが驚いたのは、「ソウルの地下鉄はそんなにおいなのか?」という部分ですけどね。確かに、東京でも路線によって地下鉄の電車内の「におい」は千差万別で、しかも路線ごとに極めて特徴的ですが、それでも、そこまで顔をしかめるような「においの経験」はないなぁ、アタクシは……。東京では10年以上暮らしましたけどね。昔乗ったNYの地下鉄は酷かったけど(←最近はマシになったと思いますよ)、ソウルもそうなのかな~~?と

まあ、あたしゃソウルに行ったことはないので、本当のところはわかりませんがね

「驚き」と言えば、今回の映画の邦題にもありますが「半地下」もそうです
劇中でも説明がありますが、韓国は北朝鮮からの攻撃に備え、地下シェルターや地下室、半地下部分を持つ家が多いのだとか。あたしゃソウルに行ったことはないので、本当のところはわからないのですが、「へ~~っ」て話でしたね

さらに、家に地下部分があるだけでなく、今回のドラマの舞台である主人公家族の家ような、家そのものが「半地下」状態なのもあるんだそうです。天井、低いです。そんな低い家でも、トイレが高い位置にあったのは、トイレを低く設置してしまうと、配水が流れていかなくなるから……なんでしょうね?たぶん。いろいろ考えてしまいました

で、当然のように家屋は鉄筋コンクリート製ですね~。日本のような木造建築では半地下、地下の構造物は、まあ、無理でしょう

この作品を見てると、ドラマの舞台となるソウルの高級住宅街は、結構、急峻な山にあるんだな、というのがわかります。主人公一家が「寄生(パラサイト)」していた高級住宅から逃げるシーンでは、やたらと階段を降りていきます

なんでも「道路以外は全てセット」というぐらいに作り込んだらしいのですけど、そうすると、あの階段とかは「本物」で「実在する」ってことですかね?「享楽の地」から、下に下がれば下がるほど、貧しい地域にたどり着く……実に象徴的でもあります

しかしながら、「金持ちは高台に住んで貧乏人を見下ろし、貧乏人は高台に住む見上げ、いつかそのゴミためからの脱出を願う……」というイメージは、貧富の差・格差社会を表現するには、いかにもステレオタイプですね。まあ、現実のソウルの街自体がそういう構造ならば仕方ないですけど。そう考えると、ソウルはある意味、ドラマの「設定」がしやすい、わかりやすい街である、ともいえますね

まあ、行ったコトないから、ホントのところは知りませんけど(笑)

そんなわけで、今回は☆を4つ付けました。正直な印象としては「3.5」ってとこなんですが、アタクシは一応、5段階評価をデフォルトにしてます。確かに、この映画の本編とエンディングには「2.5」が出てきますが、アタクシの映画評的には「.ナンボ」はナシなので……「賞総なめ」加算ということで「+0.5」して上方修正し、星4つにしました

この評価が妥当かどうかは、是非、劇場で確認ください(笑)

何はともあれ、主人公一家がウソにウソを重ねて行くシーン、いつバレるか、いつバレるか、どこでバレるかの連続で、非常にドキドキしましたよ。体に悪いかも

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