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映画「Fukushima 50」
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Fukushima 50 ☆☆☆/☆☆☆☆☆
2011年3月11日に発生した東日本大震災。その時の地震と津波で、東京電力の福島第一原子力発電所(1F=いちえふ)が全電源喪失に陥り、その結果、1Fにある4基の原子炉が、水素爆発で建屋が吹き飛ぶやら、外部に放射能汚染物質をまき散らした上に、メルトダウンするやら……という最悪の事態となりました。この映画は、その時の福島第一原発にいた東京電力ほか、原発作業員の奮闘を描いたものです
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Spoiler Alert!
百聞は一見にしかず……この作品を見終わって、最初に思ったのはこれですね。というのは、この映画、公開前から、いろんな意味で話題だったからです
実際、公開前・公開直後から、さまざまなレビューがネット上に展開され、大いに議論をわかせました。そりゃそうです。この映画は、「大地震と大津波を契機に発生した」「世界にも類を見ない原子力発電所の重大事故」で、「放射能被害の拡大を最小限にしようと発電所内で闘った」というよりは「対応に追われた」人々が描かれているからです
しかも、事実を元にした映画にもかかわらず、登場人物の一部は実名、一部は仮名、一部は肩書だけ……などと不思議な「描き分け」もしています。この妙な角度をつけたドラマの作り方は、それだけで既に、「一つのメッセージである」と解釈することは、確かに大いに可能です
ただでさえ、必要性・安全性・経済性……と、いろいろな視点での様々な議論がある「原子力発電所」という存在の、しかも、「放射能汚染を世界中にまき散らした重大事故」について、一定の角度をつけた映画を制作し公開するということは、事故以前もそうであり、事故後も相変わらず続けられている「安全神話」と「危険神話」との、不毛なハルマゲドンの片棒を担ぐ仕業と言われても仕方ないでしょう
ましてや、タイトルにもなった「Fukushima50」とは、事故発生当時、発電所内に留まっていた作業員のことを外国メディアがそう名付けたもので、「自らの被爆の危険も顧みず原発の暴走を停めようとしていた」という、まさにヒロイックなキーワードです
「命がけで未曽有=みぞゆう、じゃないですからね=大事故に立ち向かう」……決死隊だの特攻隊だの、日本人的な「自己犠牲の美徳」に、どうしてもスポットライトはあたります。実際に、暴走する原子炉に、現場で命がけで立ち向かった作業員たちは、確かに立派でしょう。最近の日本では非常に軽くなってきている「職責」とやらを、まさに全うしようとしたわけですから
しかしながら、いちえふの事故発生原因は、事実的には「外部からの電源が断たれた上に、非常用電源の発電機が地下にあり、津波による浸水で発電機が動かなくなったため」には違いないわけで、そういった事態・可能性が予見されていたにもかかわらず、東京電力は対応をしてこなかった。これまた事実です。映画では、そこいらはさらっと流していますが(←もちろん、発電機が浸水するシーンとかありますがね)、現場作業員にどの程度の責任があるかは不明ですが、発電主体であった「東京電力」の責任は、やはり、相当に重いといえると思います
その一方で、「原発を誘致したから」「原発で働いていたから」という論点については、ちょっと違うような気がしますね。映画でも作業員の家族が、避難所で肩身の狭い思いをさせられているシーンが登場します。しかし、よく言われる話ですが、「地元は田舎で貧乏でバカだから、危険な原発でも誘致して泡銭を手に入れた」というような視点がありますが、これは大きな偏見・間違いだとアタクシは思います
まあ、一部政治家や町の有力者たちの中には確かに、後先を考えないカネまみれの人もいたとは思いますが、原発のある地域の住民たちは、それほどに「愚かな人たち」ではなく、基本的に、電力会社や国が繰り返し喧伝したところの「原発は安全でクリーンで省エネで経済的」という「安全神話」を、信じたかっただけだなんですよ。「あれだけ言うのだから、大丈夫なんだろう」と
信じていれば、地元に仕事もあるし、カネも回ったわけですし、さらには首都圏の電力を支えているという、かなり「片思い」的な発想ではありますが、それなりの矜持を保てていたわけですよ。そのことを以てして「だから田舎は臭くて愚かである」などと決めつけるのは(←ワタクシのかつての上司♀に実際にそう言って憚らない輩がいましたね。「東京生まれ東京育ちで幼稚園から大学まで自宅から歩いて通ったのが自慢」などとヌカし、「田舎は臭い」が口癖だった輩が……)、田舎と言われる場所で暮らしたことのない都市部の人間の驕りでしょう
さて……
この映画では、首相(当時の首相は菅直人ですね。菅直人は「イラ菅」というあだ名でも知られてるように切れキャラらしいですが……)を佐野史郎が異様なまでにキレまくり、テンパった姿を演じています
ちまたでは、菅直人が、唐突にいちえふ視察を言い出したから、ベント(圧力の高まった原子炉の格納容器から圧を抜く作業)が遅れたと当時から喧伝され、いまだに多くの人が信じている「首相がアホやからベントが出けへんで、大事故とに繫がった」という、原発推進派と当時の野党・自民党&公明党にとって、極めて都合の良いストーリーがあります
これはその後の事故報告書だけでなく、吉田所長もインタビューなどで否定しているのですが、この映画を見た限りでは、ワタクシ的には、この「首相がアホ説」には、それほど組みしているようには見えませんでしたけどね
上記の賛否両論においては、この映画は「首相がアホ説」を採用している……などという意見も多かったですが、アタクシには「本当にそうかなぁ~」という感じでしたわ
アタクシが思うに、これは映画なわけで、そもそもがフィクションなわけです。事実をベースにしているにしても。なので、この作品を評価するに際し、過剰なまでに「自己犠牲の尊さ」とかを持ち出すのは何とも気持ち悪いし、その一方で、「民主党政権を貶めようとするプロパガンダだ」というのも、はて?如何なものか、と思いましたね
某元コピーライターがこの映画を観て、2時間泣きっぱなしだったそうですが、そりゃあ年寄りの目から死に水、ってなもんで、話4分の1程度のことではないでしょうか?
いずれ、2011年3月の東日本大震災によるいちえふの事故を契機に、日本国内にあった54基の原発は全て停止しました。2013年7月には、今回の事故を踏まえた新しい安全基準が示され、全国にある原発は、新しい基準をクリアすべく改修したり、費用などの理由からとても改修出来ないと廃炉になったりしてます。現在(2020年3月)では、安全基準をクリアした9基が再稼働しています
原子力発電所とは、果たして、人間にコントロール出来得るエネルギー源なのか?何かあった時に、決死隊を募って特攻しなければならないようなシステムが、果たして有効なのか?
そして何より、日本は地震と津波と切っても切れない国で、1基がパンクしただけで何十万人もの人間が避難しなければならないようなシステムを50以上も国土に抱えている。それこそ、北朝鮮のミサイルがちゃんと目標に当たるのなら、真っ先に狙われるのが原発だろうし……
Fukushima50はヒーローだったかもしれないけれど、スーパーマンじゃないから、当然、大量の被爆をすれば、生命だって危ない。映画では、吉田所長の葬儀は出てくるけれど、原子炉建屋に入り込んだ決死隊の人たちが、その後どうなったかは描かれていない
彼らのその後は、描かなかったのか、描けなかったのか? 下衆の勘繰りには違いないですが、見終わった感想としては、それが気になりましたね
まあ、各種評判だけを見聞きし何となく納得するのではなく、映画館で実際に見て、その上でどう思ったか……いろいろ考えてみるのもいいと思います
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