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映画「散歩する侵略者」

散歩する侵略者 ☆☆/☆☆☆☆☆

2017年公開の作品です。もともとは、「劇団イキウメ」というところの舞台作品だったようですね.見終わってから知ったのですが、「なるほど、どうりで」って感じでしたね

話は……宇宙人が、地球を侵略しようと、何故か日本にやってきます。この辺は、怪獣ドラマと一緒です。何故か日本が、日本だけが、標的になります(笑)

宇宙人たちは、まず、人間から「概念」を奪います。「概念」を奪い、獲得することで、人類(人間)がナンであるかを理解し、来たるべき「地球侵略」のためのバックデータにしようというわけです

本編の主人公は、加瀬鳴海(かせ・なるみ=長澤まさみ)という、おそらく、フリーのイラストレーター・デザイナーです(←仕事の受注で、露骨にセクハラされてるシーンとかがありますから、たぶん、立場の弱いフリーなんでしょう)。

夫の加瀬真治(かせ・しんじ=松田龍平)は、どうやら不倫をしているようなのですが……それは鳴海も知っているようです

で、その真治が突然、記憶障害(同時に運動障害もある模様)で運ばれたと聞き、鳴海は病院に行きます。すると真治は、まるで別人のようになっていて、しかも、真っ直ぐ歩けなかったり……アタマだけでなく、カラダにも問題が発生しているようにも見えます

鳴海はもちろん、いきなり別人になったかのような真治に、「ふざけないで」と怒ります。まあ、当然ですね

そんな鳴海に、真治は、実は、自分は宇宙人で、真治のアタマから何らかの「概念」を奪った上に、カラダに憑依している、と説明します。そして、地球侵略のためには、より多くの「概念」の収集が必要だと言います。そして、その収集活動を行うための案内人・「ガイド」を鳴海に求めます。

同じころ、街の別な場所では「一家バラバラ殺人事件」が発生し、ルポライターの桜井(長谷川博巳)は、その現場で、ナゾの青年・天野(高杉真宙)に会います

天野は桜井に、自分は宇宙人で地球を侵略するためにきた。自分は侵略のために「概念」を集めており、桜井には自分をその「概念」のある場所まで導いてくれる「ガイドになって欲しい」といいます。宇宙人は3人居て、その1人が、バラバラ殺人事件で、重要参考人となっている女子高生・立花あきら(恒松祐里)であるらしく、桜井は不審に思いながらも、仕事のネタになるかもしれないと思い、天野と行動を共にします……

はっきり言って、話(アイデア)としては、すげー面白いと思いますね

1)宇宙人たちは、個々ではあるが、実体を持たない精神生命体のようである
2)宇宙人たちは、他の惑星をいくつも侵略している。侵略する理由はいまひとつ不明
3)侵略の手口は、その惑星を支配ている種族に接触し、アタマの中から「概念」を奪うことでその惑星を理解。侵略の糸口にする
4)宇宙人に「概念」を奪われた人間からは、その「概念」に関連する一切の記憶・知識が欠落する
5)「概念」を奪われた人間は、意識障害、行動障害を発生させ、異常行動・暴徒化する場合もある
6)宇宙人は、近くに別の人間がいれば、憑依を繰り返す(乗り移る)ことが出来る
7)宇宙人は、憑依した人間から別の人間に憑依できなければ、その人間が死ぬときに一緒に死ぬ
8)宇宙人は、憑依した人間の知識や記憶と共存するが、行動の発出においては、かならずしも宇宙人が主導権を握れるわけではない
9)宇宙人は侵略完成後、元の惑星の人類を、「サンプル」として何体か保存しておくが、残りは抹殺する

なんか、面白いよね~~、この設定。それを松田龍平や高杉真宙が、実にすっとぼけた、いい演技で表現します。まさに、「あなたの隣人は、実は、地球侵略をめざす宇宙人かもしれない……」そんな不安が、リアルに存在しうるかのような雰囲気を醸し出します

……しかしながら、ドラマ全体を見ると???でしたなぁ

まあ、あちこりに「矛盾」や「論理不整合」があって、「????」なんだけれども、極め付けが、宇宙からの侵略者たちが、鳴海が考えるところの「愛」の「概念」を知ったことで、結果、侵略を途中で止める……というラスト

これがまさに「う~~~~む」。究極の「????」なんですなぁ……。まあ、キョンキョン(小泉今日子)も出てきましたけどね……。妙にやさぐれた医者のような役で

なんか、話の中盤で、真治と鳴海が結婚式をあげた?結婚式で流れた賛美歌?が聞こえていた教会に寄って、そこの神父……あ、Wiki見たら「牧師」だったのか……つーことは、プロテスタントかーー。まあ、その牧師(東出昌大)が、「それでは、愛について説明しましょう」……なんて登場した瞬間から

あ~~、この映画のオチは、「愛の概念」だな~~と、露骨なまでのネタバレを生じてしまうのだけど……

1980年代のアメリカの左翼系演劇じゃないんだから(爆)

「愛」の「概念」の素晴らしさ?恐ろしさ?不可解さ?に恐れおののいて、異星人が地球侵略を断念するって……陳腐過ぎるだろーーー

途中にも「所有する」という概念を真治に奪われた引き籠もりの兄ちゃんが、いきなり街中で「所有がもたらす罪悪」というか、「持つ/所有する」という概念から解き放たれたことが、いかに素晴らしいか、「持たないこと・所有しないこと」がどれだけ解放された世界か?みたいなことを説くシーンがあるけど……

原始共産制じゃないんだから(爆)

なんかねー。地球侵攻を止めた宇宙人もそうだけど……単純過ぎない???

鳴海が真治に見せていた「愛」は、むしろ「自己犠牲」のようなもので、平たく言えば「たで喰う虫も好き好き」のレベルじゃない?かと。不倫されて、いきなり別人の如く異常行動されて、それでも尚、鳴海は真治を「愛して」「受け入れよう」とする……これは、ダメんずに惚れるダメ女の「典型」みたいなものではなかろうか?

愛って、本来は双方向の概念だと思うわけですよ

もちろん、一方通行のモノもありますけど、それは「アガペー」とか、より、でっかい網で包み込むものを指すものであって、愛本来の概念とは、「不特定多数を相手にする」というよりは、目に見える範囲の相手との、双方向に関係する概念ではなかろうか

つまり、アガペーのような愛も、あるにはありますが、それは、厳密に言えば、個々の事案の解決にはならん概念ではなかろうか?と

まあ、そんなこんなで、作品を観た人間に、このような、どーでもいい「ぐだぐだ」を、事後発症として引き起こしてしまう……という点を考えても、この映画が、娯楽作品としては、まあ、せいぜい☆二つやな~~とアタクシは思った次第です

アタクシ的な評価は決して高くはないですが、その一方で「見る価値」は、十分にあるとは思いますよ。いろいろ賞は取ってるようですしね

まあ、あと、主演である長澤まさみが、いつになく抑えた演技をしていたのは、印象的でしたね。その一方で、長谷川博巳ってのは……何やらせても、妙なステレオタイプやなーーと、どうにも陳腐の極みであったことよ、とも思いましたね~。まあ、いずれも、極めて個人的印象・感想ではありますが(笑)

しかしながら、歴史のIFではありますが、仮に、長谷川博巳の役をトヨエツこと豊川悦司がやってたら、作品の仕上がりも、それはそれは、まったく違った出来、まったく違った印象になっていただったろうなぁ……とは思いました、とさ

出来上がってからキャスティングに文句言っても仕方ないですけどね。何より、元々、単なる、一観客だしね~

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