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仙山線と「欠席届」……【徒然なるまんまみ~あ】
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▼仙台に住む友人と話していたら、仙台と山形を結ぶJRの仙山線が「よく止まるんだよね~」という話になった。曰く「ちょっと風が強いと、ちょっと雨が強いと……とにかく、運休やら遅れやらが多い」。首都圏は仙台圏に比べれば、鉄道利用者がとてつもなく多いが、それでも電車自体は、そうそう止まったりはしない。利用者が多ければ、それなりに「定時運行」が担保される、ということだろうか
▼この日の話題は「定時運行」ではなかった。友人曰く「その鉄道利用者で、運休や遅れの度に毎回、会社に遅刻してくる同僚がいる」。天気予報だけでなく、JRの運行予報などを見ていれば、「明日の朝、電車が止まったり遅れたりするのは予想が付きそうなモノだ」と話す。確かにそれはもっともだ。地震ならともかく、雨風に関しては、大体の天気予報で何とかなるし、大荒れが予想される時はJRだって、事前にアナウンスしている
▼友人は続ける。「JRが遅れるたびに、毎回毎回遅刻してくる。バカなのではないか?」と。「そして、毎回のように駅でもらった『遅延証明書』とかを提出している」。友人が言いたい事は「遅延証明を提出して『遅刻』したところで、それは『遅刻』に変わりがなく、そんな証明を出し続けたところで、社会人としての『ペナルティー』から逃げられるわけじゃないのに」。つまり、どんな理由があろうが「遅刻は遅刻」ということだ
▼当然だろう。人には皆、様々な事情や理由があろうとも、それこそ「這ってでも定時に出社している人間」は山ほどいるのだ。ましてや、そんなにしょっちゅう止まる・遅れる路線を利用しているのなら、予想される遅延を回避すべくアタマなりカラダなりを使うべきであって、「唯々諾々と毎回毎回、遅延に巻き込まれてんじゃねーよっ!」……。極めてもっともな話であることよ、と思いながら聞いていた
▼そこで思い出したのが「欠席届」というヤツだ。今から40年ぐらい前の話、日本がまだバブル経済になる前、大学で「欠席届」なるものを聞いたことがあった。とある講義に行ったら、どうやら卓上に、この「欠席届」なるものが置いてあったか、それとも、だれが学生が頼まれて教師に届けたのか、記憶は定かで無いが、とにかく、授業(講義)の冒頭で、先生の口から「欠席届」なる言葉が飛び出したのだった
▼教授曰く。「こんなものを出したって欠席は欠席です。無駄ですから二度と出さないでください。ここは大学です。授業を聞いてない、は聞いてないです。どんな理由があろうと、その評価は同じです」。まさにコレだ。教授の言にあるように「欠席は欠席」であって、それに伴う「ペナルティー」なり「低評価」の発生は、どんな言い訳を並べようとも変わりはしないということだった。くだんの「遅延届け」も同じようなものだろう
▼現在、大学教授をやっている友人に聞いてみた。「いまでも欠席届なんてものはあるのかい?」と。すると、これが「ある」らしい。むしろ、最近では、授業は必ず出欠を取るそうで、出席が何割だかを切ると「定期試験の受験資格を失う」のだそうだ。文部科学省が20年ぐらい前からそのように指導してきたらしく、「昔みたいに、最初と最後だけ出席して、試験を受けて及第点を取れば単位が出るという時代ではない」そうだ
▼授業に出て無くても、独学でも何でもして、最終的に試験で合格点を取ればいいじゃないか。そういう学生はもはや通用しないそうだ。友人曰く「高校卒者の5~6割が大学に進学するようになって、かつてのような大学生=エリートといった意識はなくなった」。その一方で「学生の質は低く、どうにも出来が悪い」。そこで、「試験の成績は悪いけど、とりあえず出席はしてるから、せめてレポート出せば単位だすか……」と。一種のエクスキューズだ
▼で、くだんの「欠席届」。現代の学生たちは、結構、熱心に持ってくるそうだ。ただし、その「欠席届」をどう扱い、どう評価するかは、とりあえずはまだ「担当教員に任されている」らしい。このほかにも「公欠届」というものあるらしい。部活の公式戦やら就活やらで「授業に出られませんでした」という届けだそうだ。教員によっては、裁量で「公欠届」なら2回で「1欠席」扱い……などとするケースもあるのだとか
▼我が友人といえば「私は欠席は欠席。公欠届だそうが、欠席届だそうが」。何故だか、何となく安堵した。友人は続ける。「今の大学は、産業界の下請けというか、研修所に成り下がっている。また、当の学生たちも、ほとんどが『就職にメリットがあること』以外はやりたがらない」。「だから、大学は学問そっちのけで、『地域と連携して……』とか『企業と連携して……』とかいうのばかりやりたがる」
▼「なんで大学がそんなことばかりやるかといえば、それは企業側が、そんなことばっかりやってきた学生を採るからさ。そんな『起業家』ごっこみたいなことは、わざわざ入社前にやらなくたって、社会人になって『修羅場』に突っ込まれれば、出来るヤツは黙ってても伸びるし出来るようになる。そんな『社会人基礎力』なんてものは、社会人になってから学んだって全然間に合うものなのに。やれやれだぜ」。聞いてたこっちもやれやれだ▼「せめて大学時代ぐらいは、ちゃんとした知的基礎体力をつけて、原理的なことをちゃんと思考したり、基礎的な教養を身につけるようにしてもらいたいもんだ。民主主義ってなに?とか、憲法ってどんなもの?みたいな、基本中の基本をちゃんと考える習慣を身につけておかないと。若者とは本来、サヨクであるべきで、『まとめサイト』とか読んでわかった気になってしまうことの恐ろしさにもっと敏感であるべきなんだけどねぇ……」▼明治以降の日本の教育制度、特に義務教育は、基本的に「黙って命令に従い、迷いもなく死んでいく兵隊」を養成するための制度だった。戦後は「兵隊」が「企業戦士」に変わったに過ぎない。「正解は一つ」「間違いは死」「突出は悪」「個性よりも全体の和」……数え上げればきりがないが、「自分が自分らしく生きること」は、この国にとっては常に「悪」だった。それは昭和から平成になり、令和となった今も大して変わっていない
▼考えない人が増えていると思う。思考停止とでも言うのか、考えること自体をすぐに止めてしまう人たちが増えているように思う。モノゴトを単純化して自己アピールと他人への批判……というよりは「否定」にだけ熱心な人たちだ。そもそもの思考を、熟考を放棄してしまうのだから、他人の話をじっくりちゃんと聴くことなど出来ない。ちゃんと聞けないのだから、当然のように理解もできないだろう
▼「欠席届」や「遅延証明書」は、一体、ナニに対してのエクスキューズなのだろう。誰に向けた、どこに向かったアリバイ作りなのだろうか。国中に染み付いてしまった横目で隣を窺うクセを引きはがさない限り、この国はシュリンクしていくだけなのではないか。そんなことを思わず考えてしまった。まあ、いずれ、国は個人の集合体。最終的には一人一人がどう考えるかだ。自分のことは自分でする、自分で出来ることは自分でする。だよな、みつを
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